エンシエロとは

● 牛追いは、牛追われ? ●

 サン・フェルミン祭のハイライトともいえる牛追い(エンシエロ)は、市街地を数多くのランナーが闘牛とともに駆け抜ける、スリル満点の行事である。しかし、このエンシエロを見てこんな疑問を抱いた人は多いのではないだろうか。

 「牛のほうがランナーを追っかけて走るのに、どうして牛追いになるの? むしろ牛追われとでも言ったほうがぴったりじゃないか」
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 現在でこそ人々が牛に追われるようなかっこうとなっているが、そもそもエンシエロとは闘牛の行われる日に、牛を闘牛場まで追い込むための行事であった。牛たちを闘牛場内まで、また牛の育った牧場から闘牛の行われる街の囲い場まで追い込むために行われていたものなのだ。

 エンシエロというスペイン語には、動詞として「閉じ込める」とか「囲い込む」といった意味があり、古くは言葉通りの牛追いで間違いなかったわけだ。

 それがいつの頃からか、人のほうが牛の前を走るような行事となってしまった。この間の経緯についての知識はないが、友人や家族、あるいは恋人に勇気のあるところを見せようと、闘牛の前を走ってみせる酔狂者が出てきてもおかしくはない。まさに祭りの真っ最中なのだから。

 ちなみに、サン・フェルミン祭の最も古い記録は16世紀のものだという。
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 話は少しそれるが、17世紀には、牧場からある街へと向かうエンシエロの集団に真っ向から挑んだ人物がいる。

 とは言っても、セルバンテスの作品に登場する架空の人物ドン・キホーテである。それに、勇ましく牛の群れに立ち向かうドン・キホーテであっても、最もよく知られている風車の場面と同じように呆気なく蹴散らされてしまうけれど。(牛と遭遇する場面は『ドン・キホーテ(続編)』の第58章)


● 牛追いはパンプロナだけのもの? ●
(↓エンシエロ参加者用のパンフ)
 サン・フェルミン祭ならではの行事のように思われがちのエンシエロだが、そういうわけではない。
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 先に書いたように、エンシエロは闘牛が開催される街の闘牛場まで、牛たちを運ぶために行われていたものだ。闘牛はスペイン各地で開かれるわけだから、パンプロナと同じようなスタイルで牛追いを楽しむところも多い。(闘牛はたいがい各地の祭りの期間に合わせて開催される)
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 例えば、パンプロナ市から24キロ西に行ったところにプエンテ・ラ・レイナという小さな町がある。この町では、サン・フェルミン祭の約10日後となる7月25日、サンティアゴ祭の日に牛追いが行われている。また、スペイン国内では、パンプロナの他にカセレス県のコリア、カスティリャ=レオン地方のシウダッド・ロドリゴで行われるエンシエロが有名だという。そして、こういった各地のエンシエロに参加するプロのランナーもいる。  
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